インドネシア政府は、デジタル技術を活用した公共サービスの改善に向けて、2024年9月にINA Digitalという新しいサービスプラットフォームを段階的にリリースしました。
この取り組みは、政府のデジタル化戦略の一環として行われており、国民がより簡単かつ効率的にさまざまな公共サービスを利用できることを目指しています。
INA Digitalは、電子政府(e-Government)をさらに進化させるためのツールであり、サービスの提供における一元化や効率化を促進します。
本記事では、INA Digitalの導入背景や目的、そして今後の展望について詳しく解説します。
INA Digitalの背景と目的
インドネシアは、人口が多く広大な国土を持つことから、国民に対する効率的な公共サービスの提供が課題となってきました。
これまでも政府は、電子政府プラットフォームを通じて国民にサービスを提供してきましたが、その多くは分散化され、使いにくいと批判されていました。
サービスごとに異なるアプリやプラットフォームが存在し、国民は複数のアカウントやシステムを管理しなければならない状況でした。
こうした課題に対応するため、INA Digitalが登場しました。
INA Digitalは、国民に対して一元的にサービスを提供するスーパーアプリとして設計されており、政府のデジタルインフラを強化し、利便性を高めることを目指しています。
INA Digitalの主な目的
政府がINA Digitalを導入する主な目的は以下の通りです。
1. 公共サービスの一元化
各省庁や地方自治体が提供する公共サービスを一つのプラットフォームでまとめ、国民が簡単にアクセスできるようにすること。
2. デジタルガバナンスの強化
デジタル技術を活用して、政府の透明性や効率性を向上させ、迅速かつ正確なサービスを提供することを目指す。
3. 行政手続きの簡素化
国民が行政手続きをより簡単に行えるようにし、煩雑な手続きを削減します。これにより、時間と労力の節約が期待される。
INA Digitalの機能とサービス
INA Digitalは、複数の主要サービスを統合して提供するプラットフォームとして設計されています。
これにより、ユーザーは1つのアプリケーションからさまざまな行政サービスにアクセスできるようになります。
以下は、INA Digitalが提供する主要な機能の一部です。
1. INA-Gov
INA-Govは、政府関連のすべての手続きを一元化したサービスです。
住民票、税金、社会保障などの手続きをオンラインで行うことができ、行政機関への訪問や長時間の待ち時間が不要になります。
これにより、国民の利便性が大幅に向上することが期待されています。
2. INA-Pas
INA-Pasは、パスポートやビザなどの出入国関連の手続きをサポートするサービスです。
国際的な移動が増加する中で、迅速かつ効率的なパスポートの発行やビザの申請が可能となり、国際ビジネスや観光の促進に貢献します。
3. INA-Ku
INA-Kuは、健康保険や年金などの社会保障関連のサービスを提供します。
特に、国民健康保険(BPJS Kesehatan)や労働者保護(BPJS Ketenagakerjaan)などの重要な社会保障プログラムがこのプラットフォームを通じて管理され、国民が簡単にアクセスできるようになります。
3. デジタル公共サービスの導入による利便性と課題
INA Digitalの導入によって、インドネシア国民はさまざまな面で利便性を享受できると期待されています。
以下は、その利点の一部です。
1. 時間と労力の節約
これまで、国民が行政サービスを利用する際には、長時間待たされることや複数の窓口を訪問する必要がありましたが、INA Digitalを利用することで、オンラインで簡単に手続きを完了させることが可能となり、時間と労力の大幅な節約が見込まれます。
2. サービスの透明性向上
デジタル化されたサービスは、手続きの進行状況をリアルタイムで確認できるため、透明性が向上します。
これにより、行政手続きにおける不正行為や賄賂の発生を防止し、政府への信頼が高まることが期待されています。
3. 経済的コストの削減
オンラインでの手続きを導入することで、政府の運営コストも削減されます。
紙の書類や人員の配置にかかるコストが減少し、その分、他の公共サービスに資源を振り向けることが可能となります。
一方で、デジタル化による課題も存在します。
特に、地方やインターネット接続が不十分な地域では、こうしたデジタルサービスへのアクセスが難しい場合があるため、国全体でのインフラ整備が急務となります。
また、高齢者やデジタル技術に慣れていない層に対しては、教育プログラムやサポート体制の整備が必要です。
今後の展望と国際的な競争力の強化
インドネシアは、2024年の段階で国内のインターネット普及率が約79%に達しており、デジタルインフラの整備が進んでいます。
しかし、まだ一部の地域ではインフラが整っておらず、デジタル格差が課題となっています。政府は、こうした格差を解消するために、インフラの整備とともに、教育や支援を強化していく方針です。
また、INA Digitalの導入は、国際的な競争力の強化にも寄与することが期待されています。
デジタル化された公共サービスにより、ビジネスの効率性が向上し、外国企業や投資家にとってもインドネシアが魅力的な市場となることが推測されます。
特に、ビザ申請やビジネス許可の取得がスムーズに行えるようになることで、国際的なビジネス環境がさらに改善されることが見込まれます。
まとめ:INA Digitalがもたらす未来
インドネシア政府によるINA Digitalの導入は、国民にとって公共サービスの利便性を大幅に向上させる画期的な取り組みです。
サービスの一元化とデジタル化により、時間とコストを削減し、より効率的かつ透明性の高い政府サービスが提供されることが期待されています。
しかし、デジタル化には課題も伴います。
特に、インフラ整備やデジタル格差の解消、そして国民全体への教育とサポート体制の強化が必要です。
これらの課題を克服することで、INA Digitalはインドネシアの未来を支える重要なインフラとして機能し、国際的な競争力をさらに高める一助となるでしょう。
※本記事はこちらの現地記事を引用・翻訳したものです。