インドネシアのジョコ・ウィドド大統領（ジョコウィ）は、2045年までにインドネシアが先進国となるため、経済成長率を6〜7％に引き上げることを目標に掲げています。
これは、「インドネシア・エマス 2045（Indonesia Emas 2045）」というビジョンに基づき、持続的な経済成長と国民の繁栄を実現するための道筋です。
この記事では、このビジョンの背景、目標、課題、そして達成に向けた具体的な政策について解説します。
インドネシア・エマス 2045とは？
インドネシア・エマス 2045は、インドネシアが独立100周年を迎える2045年を目標に、国全体の経済的・社会的発展を加速させる国家戦略です。
ジョコウィ大統領が掲げたこのビジョンは、インドネシアを中所得国から高所得国へと引き上げるための成長戦略の一部です。
インドネシア・エマス 2045は、国民の生活水準を向上させるための長期的な計画であり、具体的な目標として以下の項目が挙げられています。
■ 経済成長率を6〜7％に引き上げ、年間平均成長を維持すること
■ 国民一人当たりの所得を大幅に引き上げ、2045年までに年間US$23,000（約354万円）を目指すこと
■ 持続可能な経済を推進し、特にグリーンエネルギーやデジタル経済を基盤とした成長を促進させること
■ 教育やインフラ整備の充実を通じて、国民全体の質の向上を目指すこと
これらの目標を達成するためには、持続的かつ包括的な政策が必要となります。
経済成長6〜7％を達成するための政策課題
経済成長を6〜7％に引き上げるためには、インドネシア政府は国内外で多くの課題に取り組む必要があります。特に以下の4つの分野が重要視されています。
1. インフラの整備
インフラは経済成長の基盤です。
ジョコウィ政権は、2014年からの在任期間中に多数のインフラプロジェクトを推進し、道路、港湾、空港、鉄道などの交通網を大幅に改善しました。
これにより、物流コストの削減や、国内外の企業投資の促進が期待されています。
特に、ジャカルタと周辺地域を結ぶ高速鉄道の開通や、工業団地の整備が経済成長の推進力となるでしょう。
2. 人材の育成
経済成長を支えるためには、質の高い労働力が不可欠です。
インドネシアは、現在、若年層の人口が多く、この人口ボーナスを活用するために、教育の改善が急務となっています。
特に、デジタルスキルや技術教育が重要視されており、ICT分野での人材育成が進められています。
また、政府は大学や職業訓練機関と協力して、産業界のニーズに合った人材育成プログラムを展開しています。
3. デジタル経済と産業4.0
インドネシアは、デジタル経済の急成長を見込んでおり、Eコマース、フィンテック、デジタルヘルスケアなどの分野での成長が期待されています。
これに加えて、インドネシア政府は産業4.0を推進し、製造業の自動化や効率化を目指しています。
これにより、インドネシアの競争力を国際的に高めることができ、投資を呼び込む土壌が整います。
4. グリーンエコノミー
持続可能な経済成長を実現するためには、環境保護と経済発展のバランスが重要です。
ジョコウィ大統領は、インドネシアが「グリーンエコノミー」のリーダーとなることを目指しており、再生可能エネルギーの普及や、環境に配慮した産業構造の改革を進めています。
特に、バイオ燃料やソーラーエネルギーへの投資が加速しており、これにより新たな雇用機会が生まれ、経済成長にも寄与することが期待されています。
国際市場への対応と投資促進
経済成長を6〜7％に引き上げるためには、国際市場への参入が不可欠です。
特に、インドネシアはASEAN地域において経済的なリーダーシップを強化し、貿易と投資を拡大する必要があります。
1. 自由貿易協定（FTA）と経済連携協定（EPA）
インドネシアは、ASEAN自由貿易協定（AFTA）や、日本、韓国、欧州連合（EU）との経済連携協定（EPA）を積極的に推進しています。
これにより、国内産業の競争力を高め、輸出市場の拡大を図っています。
また、インドネシアは中国との経済協力を強化し、「一帯一路」構想の下でのインフラプロジェクトや投資を引き込むことに成功しています。
2. 外国直接投資（FDI）の増加
政府は、外国直接投資（FDI）の増加を目指しており、特にインフラ、製造業、エネルギー分野での外国投資を促進しています。
投資環境を整えるために、労働法改革や税制優遇措置が導入されており、これによりインドネシアは投資先としての魅力を高めています。
4. 社会的課題と包摂的成長
高い経済成長を実現する一方で、社会的な格差や貧困の問題にも取り組むことが重要です。
ジョコウィ政権は、包摂的成長（インクルーシブグロース）を掲げ、すべての国民が経済成長の恩恵を享受できるような政策を推進しています。
1. 貧困削減プログラム
政府は、貧困削減を最優先課題としており、社会福祉プログラムや社会保険（BPJS）の拡充を進めています。
これにより、低所得層への支援を強化し、医療、教育、住宅などの基本的なサービスへのアクセスを改善しています。
また、農村部や離島地域での経済開発プロジェクトが進行中で、地方経済の活性化を図っています。
2. 中小企業（MSME）支援
インドネシアの経済を支える中小企業（MSME）は、全労働力の約97％を雇用しており、その支援は不可欠です。
政府は、デジタル技術を活用した支援プログラムを提供し、Eコマースやフィンテックを通じて中小企業の成長を後押ししています。
また、金融アクセスの拡充により、企業が資金調達を行いやすくなっています。
まとめ：インドネシアが2045年に先進国になるために
インドネシアの経済成長目標は、2045年までに6〜7％の成長率を維持し、先進国の仲間入りを果たすことです。
この目標を達成するためには、インフラの整備、人材育成、デジタル経済の推進、グリーンエコノミーへの投資、そして包摂的な社会政策が不可欠です。
ジョコウィ政権の下での政策実行は、この壮大なビジョンを現実のものにするための重要なステップになるでしょう。
※本記事はこちらの現地記事を引用・翻訳したものです。