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【社会】インドネシアの公共交通機関におけるバリアフリー化の現状と課題

インドネシア国内において特に首都ジャカルタでは、公共交通機関のバリアフリー化が進められています。
近年、障がい者が公共交通を利用する際に直面する様々な課題に対処するため、政府や交通運営機関は新たな施策を打ち出しています。
本記事では、インドネシアにおける公共交通機関のバリアフリー化の進展と今後の課題、そして利用動向に関する統計的な背景について詳しく解説します。


インドネシアの公共交通の現状

ジャカルタの公共交通は、MRT(大量高速輸送)、TransJakartaバス、LRT(軽量鉄道)といった複数のシステムから成り立っています。
特にラッシュアワー時には、多くの市民に利用され、都市の移動を支える重要な役割を果たしていますが、障がい者や高齢者にとって利用しにくいという課題が長く存在していました。

これを改善するため、政府は2020年代初頭から段階的にバリアフリー対応を進めています。たとえば、MRTの各駅には広い改札口やエレベーターが設置され、車椅子利用者や視覚障がい者も利用しやすい設計になっています。
また、TransJakartaバスでは「TransJakarta Cares」プログラムが導入され、障がい者専用のサポートサービスが提供され、2019年には5万1,000人以上の障がい者に利用されています。


政府のバリアフリー施策とPramono Anung氏の公約

2024年のジャカルタ知事選に立候補しているPramono Anung氏は、すべての公共交通機関が障がい者に優しい施設を提供することを公約に掲げています。
特に、MRTやLRTの駅でのチケット利用の複雑さに対し、障がい者がより簡単に利用できるシステムを導入する計画を進めています。
また、車椅子利用者向けの専用スペースや視覚障がい者向けの案内システムの改善も予定されています。

Pramono氏の目標は、障がい者が安心して利用できる交通環境を提供することです。
これは既存の交通機関だけでなく、新しく計画されているインフラプロジェクトにもバリアフリー基準を取り入れることを目指しているという証拠です。


統計で見る公共交通のバリアフリー状況

インドネシアにおける公共交通機関のバリアフリー化に関するデータには、障がい者対応が進展していることを示しています。
例えば、2023年の調査ではジャカルタのMRT駅の約70%が車椅子利用者向けの設備を完備していますが、一方で全ての駅でエレベーターや段差のないルートが提供されているわけではありません。

TransJakartaバスシステムでは、全車両のうち15%が低床バスとなっており、これにより車椅子利用者がよりスムーズに乗降できるようになっています。
また、視覚障がい者や聴覚障がい者向けのデジタルサインや音声案内も一部の路線で導入されています。


残る課題と政府の取り組み

バリアフリー化は進んでいるものの、インドネシアの公共交通機関にはまだ多くの課題が残っています。
特にバス停や駅へのアクセスが不十分な地域が多く、障がい者や高齢者が安全に移動できる環境整備が急務です。
ジャカルタの主要交差点や歩道の多くは車椅子利用者に対応しておらず、公共交通を利用する前に不便を感じることが少なくありません。

また、バリアフリー基準が明確に定められていないため、設置された施設が十分に機能していないケースもあります。
たとえば、エレベーターやスロープの位置が利用者にとって使いづらいなどの問題が報告されています。
政府はこれらの課題に対処するため、公共インフラのバリアフリー化に向けた規制を強化する予定です。


未来の展望:持続可能なバリアフリー社会の実現へ

インドネシア政府は、2030年までにすべての公共交通機関を完全にバリアフリー化することを目標にしています。
この目標に向け、持続可能な交通インフラの開発が進められています。
特に、車椅子対応のバスやトイレ、視覚障がい者向けの触覚サインの普及が今後の重点課題となっています。

また、障がい者団体や国際的な支援機関との協力も重要なポイントです。
インドネシアは国際的なバリアフリー基準を参考にしながら、自国のニーズに応じた改善を進めており、観光客を含むすべての人にとって快適な都市環境の整備が期待されています。


まとめ

インドネシア、特にジャカルタにおける公共交通機関のバリアフリー化はここ数年で大きく進展しました。
しかし、まだ十分ではなく、特に歩道や駅へのアクセス、施設の使いやすさの向上が求められています。
2030年までに完全なバリアフリー化を実現するためには、さらに多くの取り組みが必要です。
持続可能な都市交通を実現するためには、インフラ改善に加え、利用者の声を反映した柔軟な政策が不可欠でしょう。


※本記事はこちらの現地記事を引用・翻訳したものです。